
水谷 翠
公認会計士・税理士・行政書士
銀座スフィア税理士法人 代表社員
銀座スフィア税理士法人 代表社員
公認会計士・税理士・行政書士。「親切な対応、丁寧な仕事、役に立つアドバイスで、中小企業の夢を応援します!」を掲げ、税務相談に留まらない会計事務所を目指す。飲食店、小売店等のクライアント多数、出店計画や経営の立て直しの相談などにも対応。中堅・大手企業の事業計画策定支援等も行い、東京証券取引所に上場する4社の社外役員を兼任。著書『税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル(初版2017.4、改訂版2019.3、第3版2021.10、第4版2024.1)』。
今、確定申告前に知りたい!今年スタート定額減税のポイント
2024.12.09 配信今年注目されている「定額減税」。
自分は減税対象なのか?いくら減税されるのか?どのように減税されるのか?
今さら聞けない「定額減税」の気になるポイントを解説します。
1.定額減税とは?
岸田政権の置き土産とも言うべき、国民の可処分所得増を目指す「定額減税」。令和5年度に政策が決定し、今年6月より国民1人4万円(所得税3万円+住民税1万円)の減税が行われています。減税の方法は、給与所得者、個人事業主、年金受給者等、税金の納め方によって異なります。また、年間の所得税及び住民税の税額が減税額に満たない場合には、その差額相当の調整給付金を受けることにより可処分所得が増加する仕組みです。
なお、そもそも非課税世帯である場合には減税するべき納税額がありませんので、別途、給付金が支給されます。
2.定額減税の対象者は?
政府によると、この定額減税は国民の9500万人が対象となると推計されています。具体的な対象者は以下の通りです。
(1)納税者本人
【所得税】
・日本国内に住所がある
・2024年分の所得税の納税者
・2024年の合計所得金額が1,805万円以下
【住民税】
・日本国内に住所がある
・2024年分の個人住民税所得割の納税者(均等割のみ課税される納税義務者は対象外)
・2023年の合計所得金額が1,805万円以下
(2)同一生計配偶者
・納税者本人と生計を一にしている
・日本国内に住所がある
・年間の合計所得金額が48万円以下(給与所得だけの場合、給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
(3)扶養親族
・納税者本人と生計を一にしている親族(16歳未満の子どもを含む)
・日本国内に住所がある
・年間の合計所得金額が48万円以下(給与所得だけの場合、給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
◎ポイント◎
・納税者本人は、同一生計の配偶者及び扶養親族の分も合わせて減税されます
・通常の所得税の計算では扶養親族としてカウントされない16歳未満の子どもも定額減税の対象となります
・合計所得金額が1805万円超の人は、その同一生計配偶者及び扶養親族も含めて定額減税の対象外となります
・海外留学中の扶養親族は定額減税の対象外です
3.定額減税の方法【給与所得者の場合】
給与所得者は、本人による手続きは特に不要です。令和6年6月1日以降最初に支払われる給与または賞与から源泉徴収(給与天引き)される所得税及び住民税から定額減税の額が控除されます。控除しきれない定額減税額は、その後の給与や賞与の支給時、さらに年末調整時に順次控除され、それでも控除しきれない場合には令和7年度に調整給付金の給付を受けます。なお、給与明細や源泉徴収票には定額減税額が明記されます。
◎ポイント◎
・給与所得者の場合には、定額減税のための本人による手続きは不要です
・住宅ローン控除が大きい人の場合など、令和6年中の所得税から定額減税の額が控除しきれない場合には令和7年度に調整給付金があります
4.定額減税の方法【個人事業主の場合】
【所得税】
個人事業主の場合には、原則として、令和6年分の所得税の確定申告の際に、所得税の額から定額減税の額を差し引きます。予定納税の対象者については、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(特別農業所得者の場合は第2期分予定納税額)から本人分に係る定額減税の額が控除されます。第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、その金額は第2期分予定納税額から控除されます。
同一生計配偶者等に係る定額減税の額については、令和6年7月31日までに「予定納税額の減額申請」を行うことで予定納税額から控除することができました。この手続きを行っていない個人事業主は、令和6年分の確定申告の際にその額を控除しますので、減税時期は後ろ倒しになりますが減税の金額に影響はありません。
なお、個人事業主の配偶者等で青色事業専従者等の場合は、その個人事業主の定額減税の対象となる同一生計配偶者等には含まれません。青色事業専従者等は、他に自身の税額がある場合にはそこから定額減税の額を控除し、控除しきれない場合又は税額負担が無い場合には調整給付金の給付を受けます。
【住民税】
住民税の定額減税については、本人による手続きは特に不要です。市区町村から送付された第1期分住民税(令和6年6月)から定額減税の金額が控除されています。控除しきれない金額がある場合には、第2期分以降の納付時に順次控除されます。
◎ポイント◎
・個人事業主の場合には、原則として令和6年分の確定申告の中で定額減税を行います
・予定納税がある個人事業主は、予定納税額から本人分の定額減税の額が控除され、同一生計配偶者及び扶養親族分の定額減税は「予定納税額の減税申請」を行うことで予定納税額から控除されます
・個人事業主の配偶者等で青色事業専従者等の場合は、その個人事業主の定額減税の対象となる同一生計配偶者等には含まれません
5.定額減税の方法【年金受給者の場合】
年金受給者は、本人による手続きは特に不要です。令和6年6月1日以降最初に受け取る年金から源泉徴収される所得税及び住民税から定額減税の額が差し引かれます。
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「定額減税」の仕組みの全貌は少し複雑かもしれませんが、ご自身の該当するパターンについてよくご確認ください。
給与所得者の方は、基本的にご自身で手続きを行う必要はありません。
個人事業主の方は、確定申告の際に「令和6年分特別税額控除」の欄に定額減税の金額を書き忘れないよう、ご注意ください!