業界リスクニュース

気づかないうちに違反するリスクの高い景品表示、していませんか?

リスクポイント

●お客さまを誘引する手段として取引に付随して提供する物品や金銭等は違法になるリスクが潜んでいる
●「景品類」に該当する場合は、取引価格に応じて最高額が設けられている
●景品表示法に違反した場合、違反行為の差止めなど必要に応じた「措置命令」を受けるため、検討段階で法律との照らし合わせが大事

■はじめに

商品におまけを付けて販売を促進する。大胆な値引きをして集客する。経営に関わっている方なら一度は試したことのある販売戦略ではないでしょうか。しかし、このようなプレゼント戦略は、実は景品表示法で制限されています。なぜなら、プレゼントによる競争がエスカレートすると、プレゼント勝負となり、良い商品が育たなくなってしまうからです。今回は、一歩間違えると違法となってしまう、プレゼント戦略についてお話しします。

■景品類とは

プレゼント戦略には、おまけ、割引、ポイント付与など様々なものがありますが、法律上はどのように定義されているのでしょうか。プレゼントは、景品表示法上、「景品類」とされ、「顧客を誘引するための手段として、・・・事業者が自己の供給する商品又は労務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益」(同法 第2条3項)と定義されています。法律の規定は非常に抽象度が高いため、何もかもが景品類に該当してしまいそうです。そこで、法律の規定を明確にするため、消費者庁から「景品類等の指定の告示の運用基準」というものが制定されています。
同運用基準では、以下のようなものが、「景品類」の例外と定められています。
①値引き、割戻し
「セットで〇〇%値引き」「××個買うと〇〇%off」「××円毎のお買い上げで1ポイント付与」など。ポイントカードなどは「割戻し」に当たるため、基本的に景品類には該当しません。ただし、割戻し分の使途を制限したり、割戻しの相手を後述の「懸賞」によって決定したりすると、「割戻し」として認められません。
②同一商品の提供
「CD3枚購入すると1枚無料」など。値引きの一種です。某ラーメンチェーン店では「ラーメン1杯食べたら1杯無料」なんてこともありました。ただし、同一商品である必要があるため、「ハンバーガーを買うと、フライドポテトが無料」などは例外として認められません。
③アフターサービス
「パソコン購入者には1年間無料サポート」など。どこまでがアフターサービスの範囲内なのか、判断が難しい場合がありますが、取引本来の内容との結びつきがポイントとなります。
④当然に付随する利益
テイクアウト時の紙ナプキンや割り箸など。慣習的にどこもやっていることですから、そもそもプレゼントというイメージがないかもしれません。

■景品提供の制限

プレゼントが「景品類」に該当した場合、プレゼントの最高額が規制されます(景表法第4条)。最高額は、景品類提供の方法、すなわち「懸賞」か「総付景品」かによって異なります。
「懸賞」とは、抽選やクイズの正誤などの方法によって当選者や景品類の種類を定めることをいい、景品類の最高額は、以下のように制限されています。
 ●取引の価額が5,000円未満の場合・・・取引の価額の20倍まで
 ●取引の価額が5,000円以上の場合・・・一律10万円
「総付景品」とは、商品の購入者や来店者に対してもれなく景品類を提供することをいい、先着順などもこれに含まれます。総付景品については、提供できる景品類の最高額が以下のように定められています。
 ●取引の価額が1,000円未満の場合は200円まで
 ●取引の価額が1,000円以上の場合は取引の価額の10分の2の金額まで
最近は、「LINE登録すれば〇〇1個プレゼント」というようなサービスをよく見かけますが、あれは購入者にLINE登録の一手間をかけてもらうことで、〇〇1個分の対価という位置付けにし、「総付景品」の規制外にしているわけです。

■景品表示法に違反した場合

消費者庁は、景品類の制限に違反した事業者に対し、その行為の差し止めや、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができます(これを「措置命令」といいます)。措置命令に従わなかった場合、事業者の代表者等は2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が、また、当該事業者には3億円以下の罰金が科せられます。

■まとめ

以上のように、プレゼント戦略は実は景品表示法で規制されていて、違反した場合には罰則まで設けられています。プレゼント戦略を検討されている方は、そのプレゼントが「景品類」に該当しないか、該当するとして制限金額を超えていないか、今一度よくご確認ください。

小山 皓三

弁護士
中央大学卒業。「企業が経営を伸ばすということは日本を救うということだ」をモットーに、地域、業種を超え、約130社の顧問業務を取り扱う。経営上発生する法律リスクへの備え、社内ルールの整備や社内研修といった紛争予防にも注力している。